システムを入れたら、仕事が増えたのはなぜ?
業務効率化のはずが「前の方が楽だった」
従業員約150名のA社では、業務効率化を目的に、勤怠管理、経費精算、案件管理などのクラウドシステムを導入しました。事前に業務フローを整理し、担当者へのヒアリングやテストも行ったうえでの導入でした。
ところが運用を始めると、勤怠では「この場合はどの申請?」という問い合わせが増加。経費精算では入力ミスによる差し戻し、案件管理では新システムと従来のExcelへの二重入力が発生しました。
社員からは「システムを入れる前の方が楽だった」という声も。
作業時間を確認すると、導入前には全社で月約100時間だった関連業務が、導入直後には約130時間に増えていました。
業務を減らすためのシステムが、逆に新しい仕事を生み出していたのです。

使って初めて「本当に変えるべきところ」が見えた
A社では「システム選びを間違えたのでは?」と考えましたが、問い合わせや差し戻しを調べると、別の原因が見えてきました。
- 勤怠:会社の制度を忠実にシステムへ反映した結果、申請の選択肢が多くなり、社員が迷っていた。
- 経費精算」入力できる項目を細かく設定したことで、確認作業が増えていた。
そこでA社は、システムではなく業務側を見直すことにしました。
似た申請をまとめる、不要な入力項目や承認を減らす、社内ルールを統一する。案件管理では従来のExcelを廃止し、新システムへの一本化を進めました。その結果、導入直後に月約130時間だった作業は、3か月後には約90時間、6か月後には約60時間まで減少しました。
システム側の問題ではなく運用側の問題。
「やらなくていい仕事を決めたこと」が効率化につながったのです。
DXは「導入した日」がゴールではない
A社は導入前にも十分な検討をしていました。それでも、実際に40人が日常業務で使うと、事前には想定できなかった問題が出てきました。
「この機能が使えるか」は導入前に確認できます。しかし、「社員が迷わず使えるか」「担当者の確認作業がどれだけ発生するか」までは、実際に運用して初めて分かることがあります。
そこでA社は、システム稼働日をDXの完成日と考えるのをやめました。
導入 → 使ってみる → 問題を見つける → 業務や設定を変える → 効果を確認する。
システムを入れたのに仕事が増えたからといって、すぐに失敗とは限りません。むしろ、これまで見えなかった業務の複雑さや無駄が見えてきた可能性があります。
システム導入はDXのゴールではなく、本当の業務改善のスタートなのです。
